認知症の治療(脳活性化リハビリテーション)

認知症の治療(脳活性化リハビリテーション)

認知症によって脳の神経細胞が破壊されてしまうと、もう元には戻せません。でも、薬の治療で認知症の進行を抑えながら併せて行える、もうひとつの有効とされている治療方法があります。それは、脳活性化リハビリテーションです。

体と頭を同時に使う認知症予防法(BDNFを増やす)

眠っている神経細胞を目覚めさせる治療

実は、脳の神経細胞のすべてが活動しているのでなく、眠っている神経細胞も多くあるのです。
眠っている神経細胞は破壊されているわけではないので、目を覚ませば、破壊された神経細胞の代わりとなって活動できるのです。眠っている神経細胞を目覚めさせるには、五感(見る、聞く、触れる、味わう、においをかぐ)を使う必要があります。

脳活性化リハビリテーションはどんな方法で行われるのか、治療の方法ごとに見ていきましょう。

回想法

回想法では、昔の体験を思い出して話をしたり、話を聞いたりします。介護施設等で、精神科医や心理療法士、作業療法士の指導により、グループで回想法が行われていることが多いです。

認知症の人は新しいことは忘れてしまいますが、昔のことはよく覚えているということを、治療に活用します。昔はよく使っていた生活用品を実際に手に取ってみたり、よく遊んだ昔のおもちゃで遊んでみたりすることが、脳の働きを高めると言われています。コマやお手玉など、体でおぼえた遊びはなかなか忘れないものですから、懐かしさも手伝って楽しいひとときが過ごせることでしょう。
昔よく聴いた歌や音楽を流してみるのも、効果的ということです。

音楽療法

音楽を聴くことで癒されたり、誰かといっしょに歌ったり演奏したりすることで、お互いの気持ちが結びつけられたりするものです。認知症の人の場合も、音楽療法が記憶力や注意力の改善に効果的であるという結果が報告されています。脳の血流がよくなり、眠っている神経細胞を目覚めさせているのでしょう。

音楽療法には、受動的音楽療法(音楽を聴く方法)と、能動的音楽療法(歌・演奏・手拍子をする方法)がありますが、認知症の治療においては、能動的音楽療法の方が効果が高いとされています。能動的音楽療法では、音の刺激だけではなく、歌うことで腹筋も使うので、体全体の活動を高めることにつながると言われています。楽器の演奏や手拍子をすると、手から伝わってくる刺激も感じることができます。

美術療法

絵画や折り紙、粘土細工などの制作をすることで、脳の活性化をはかる療法です。絵を描く対象となるものに触れたり、食べ物なら実際に食べてみたりして、五感を使うことでイメージを浮かべます。そのイメージを絵で表現するわけですが、五感を使って進める作業ですから、脳への刺激が期待できます。


アニマルセラピー

動物と触れ合うことにより、認知症の症状の改善をはかる療法です。動物の愛らしさで心が癒されたり、動物の世話をしてあげたいというやさしい気持ちが引き出されたりします。認知症が進行している人でも、この療法により落ち着きが取り戻せしたり、生き生きして意欲的になれたりすることがあるようです。

学習療法

名前のとおり、簡単な計算や読み書きなどの学習をすることで、脳の前頭前野に刺激を与えます。認知症の症状は、脳の前頭前野に支配されているものが多いのです。簡単な学習を短時間ずつ継続することで、効果が期待できるようです。

アロマセラピー

植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使用する療法です。専用の器具を使って香りを楽しんだり、入浴時にお湯に入れたり、いろいろな方法があります。睡眠に効果的であるラベンダーを使用することで、昼と夜の逆転が解消したという報告もあります。

認知症の予防(アロマオイル)

タッチセラピー

手で皮膚に触れることで刺激を与えたり、心地よさで気持ちを安定させる効果があると言われています。不安な気持ちにより起きていた、認知症の周辺症状が改善することもあるようです。方法によっては血行も良くなり、体の動きも良くなると言われています。